新婚夫婦が出かけたその後…。
エローラ : パパ…。
ルドマン : エローラ。ラスネルが旅に出て淋しいだろうな。な、なんだその格好は?!
エローラはSの女王様スタイルとなっていた。
上半身はビスチェ、下半身は横に切れ込みのある革のスカート、顔はバタフライマスク[目の釣り上がった蝶仮面]、足はハイヒールブーツ、手には長い鞭を持っていた。
エローラ : その事なんだけど、パパ。私…ラスネル君の後をついて行くわ。もちろん、二人の邪魔はできないから、こっそりと…。
ルドマン : な、なんだって!? それはいかんぞ! エローラ!
エローラ : でも私のいない所で、ラスネル君にもしもの事があったらと思うと…。
ルドマン : うーむ…エローラはラスネルが…。エローラの気持ちも分かる…。確かにワシが女だったら、抱き着かれてあんな事やこんな事をされまくりたいと思うだろう…はぁはぁ…。今のはなんでもない。
エローラ : パパが止めても私は行くわ!
ルドマン : ではこうしたらどうだろう。実は山奥の村の西の小島に小さなほこらがあるんだが、そのほこらの中に置いてある壺の様子を誰かに見てきてもらおうと思っていたのだ。もしエローラが誰にも迷惑をかけずにそこまで行ってこられたら、旅立つのを許そう。それができるならば、お前が旅を続ける事も可能だと言えるからな。どうだね?エローラ。
エローラ : ええ、パパ。きっと見て帰ってきましてよ。
ルドマン : よし決まった。ではエローラに入口の扉の鍵を持たせよう。山奥の村の西の小島のほこらだ。その中にある壺の色を調べてきてくれ。

エローラが旅立とうすると、アンディが現れた。
アンディ : エローラさん、ボクも一緒に旅に…。
エローラ : よろしくてよ。でもほこらまでは、誰の助けも借りてはいけないの。その後は、お願いするわよ。
アンディ : はいっ。ところで、キャッツアイではなく、バタフライマスクというのがエローラさんのセンスですね。
エローラ : ほーっほほほほ。

《封印のほこら》
エローラ : パパったら、なぜこんな所にほこらを建てたのかしら? とにかく扉を開けてみますわ。
エローラは壺を調べた。
壺は静かに青い光を湛{たた}えている。

エローラはサラボナに戻った。

《サラボナ》
ルドマン : おお! お帰り! どうやら無事に帰ってきたようだな。もちろん、後ろから護衛をつけていたが、その者達の出番はなかったようだ。
エローラ : 壺の色は青くてよ。
ルドマン : そうか、壺の色は青かったか。うむ、ひと安心だ。あ、いやいやなんでもない。
エローラ : パパ。私、ほこらに行く時もラスネル君の事を考えて思ったわ。やっぱりあの人について行きたいって。お願い、許して下さい。
ルドマン : うむ…そこまで言うなら仕方がない。しかし、決して無理をするんじゃないぞ。
エローラ : ええ…ええ、パパ。ありがとう!
ルドマン : そうそう、ポートセルミにある私の二隻目の船を自由に使っていいぞ。すぐにお前に相応しい薔薇の花で飾るよう連絡しておこう。
エローラ : お願いするわ。
ルドマン : 気をつけてな。もし疲れたらいつでも帰ってくるんだぞ。そして世界が本当に平和になったその時こそ、また一緒に暮らそう!
エローラ : パパ、行ってきます…。

エローラ、アンディ、そしてエローラのペットのスターキメラのリリアンは、ラスネル達を追って旅立った。
エローラ : アンディ、ちゃんと変装して来たわね。
アンディ : 旅の遊び人、ピエロの格好です。
エローラ : ほーっほほほほ、色男が台無しね。
スターキメラのリリアンもケーコジキメラの色に塗られていた。
エローラ : ふふん、行くわよ!

ラスネル達は港町ポートセルミに来ていた。
《ポートセルミ》
ベリンカ : あの船じゃない?
船乗り : ん? もしかしたら、あんたラスネルさんかい?
ラスネル : そうだぜ。こんなキュートなお嫁さんがいて羨ましいだろ?
ベリンカ : ラスネルったら。
船乗り : やっぱりそうか! ルドマンの旦那から連絡をもらったぜ! さあ、そこにあるのがルドマンの旦那の船だ。
ベリンカ : 立派な船ねぇ。
ラスネル : ベッドはあるかな?
船乗り : わはは、新婚さんと聞いて、用意しておいたよ。ただ、円形の回転ベッドとまではいかないけどね。自由に乗ってくんなっ。
ラスネル : ははは、言われるまでもなく、ベリンカの上に自由に乗るぞ。もちろん、たまにはベリンカが上になる体位もいいけどね。
ベリンカ : ラスネルったらっ!
ラスネル : (そう言えば、女の子とのエッチで俺が下になった事ないな。えっ? なぜかって? そりゃ、無理矢理ばっかりだったからに決まってるだろ。)
隣の船は一周り小さかったが、ゴージャスに飾られていた。
ベリンカ : あれー? 隣の船は?
船乗り : そいつは秘密さ。
ラスネル : なにやら薔薇の花でいっぱいだ。ルビーの宝石も埋め込まれている。1個貰ってもいいかな? ベリンカに結婚プレゼントをしないといけないし。
ベリンカ : 盗んだ宝石で買ってもらっても嬉しくないわ…。
ラスネル : なら、やめておくか。
船乗り : 船出する前に酒場にゆけば、色々聞けるかも知れないぜっ。

若い夫婦の乗った船は出航した。
《船上》
ラスネル : おおっ、ここがベッドか。ここで二人の生活を楽しむわけだな。
ベリンカ : うん。
ミハルン : 二人が子供作る所を、私も見てていいですか?
ラスネル : アホッ、お前は地下室だ!

ベリンカ : ねえ、新婚旅行の代わりに、私達の思い出の街へ行ってみたいの。いーかなぁ?
ラスネル : いいぜ。

《アルカパの街》
ベリンカ : わー、懐かしぃ。

《アルカパ・公園》
ベリンカ : こういう所で、お話するのっていいね。
ラスネル : そうだな、話だけじゃなくて、野外エッチもいいかも。
ラスネルはベリンカに抱き着こうとした。しかし、かわされた。
ベリンカ : ねぇ、覚えてる? 私も、今思い出したんだけど…。確かこっちの方。
ラスネル : おい、ベリンカ。どこ行くんだよ?
ベリンカ : あっ、あった。
ラスネル : えっ、何があったって?
ベリンカ : ほら、これ覚えてる? 10年以上前に、一緒に背比べした跡よ。
ラスネル : そ、そうだっけ?
ベリンカ : そうよ。あの頃は私の方が身長高かったのにね。
ラスネル : そうだったな、今じゃ俺の方が高いけど。

《アルカパ・宿屋》
ベリンカ : 私ぃ、ここで暮らしていたのね。
ラスネル : 今日はここで宿を取るぜ。

《お風呂》
二人は裸になった。
ベリンカ : お・ま・た・せ。
ラスネル : ベリンカ…綺麗だ…。
ベリンカ : きゃっ、そんなにおっきくなっちゃうんだ…。
ラスネル : 洗いっこしようぜ。

ラスネル : じー…。処女なんだね。
ベリンカ : きゃ…そんなに見ちゃダメッ…。あっ、昔もそこをそんな事された気がする。
ラスネル : そうだったか?
ベリンカ : 先に上がって待ってて。もう少ししたら私も出るから。

ラスネル : …遅いなー、ベリンカ…遅いなー…ぐーぐー。
ベリンカがお風呂から上がってきた。
ラスネル : おっ、やっと来たか。いつでもOKだぜ。
ベリンカ : あらラスネル。ごめんね、起こしちゃった? ちょっとね、色々昔の事を思い出しちゃって……。
ラスネル : 確かに辛い事もあっただろうな。
ベリンカ : ううん、別に悲しいわけじゃないのよ。昔は昔、今は今だもの。
ラスネル : そうか。
ベリンカ : ねえラスネル……。そっちに行ってもいい?
ラスネル : 来なきゃ、俺がそっちへ行くだけだ。
ベリンカ : 愛してるわラスネル。


翌日
ラスネル : はぁ、昨晩はやっとベリンカと…。
ベリンカ : うふふ。じゃ、旅を続けましょ。
ラスネル : もう痛くないか?
ベリンカ : まだちょっと…。でも平気。
ラスネル : そうか新婚旅行はまだまだ続くぜ。

数ヶ月の間、色々な場所を旅行した。

《小さな港町》
海辺にはヨットが並んでいる。
男 : 新婚さんかい? 二人っきりでヨットに乗ったまま一晩熱い夜を過ごすってのはどうだい。
ベリンカ : 私達は船があるから…。
ラスネル : いや、船にはプックルやミハルンがいるから二人っきりじゃない。
ベリンカ : そうね、ミハルンが覗いてた時は、一気に白けちゃったしぃ。
ラスネル : どうやら、俺達は覗かれて興奮する趣味はないらしい。ヨットを借りるよ。
男 : 決まりだね。

二人はヨットの上で一晩明かした。

ミハルン : 昨夜はお楽しみでしたね。
ラスネル : ドラクエ1でローラ姫を抱えながら宿屋に泊まった時の宿屋のオヤジみたいな台詞を事言ってるんじゃない。
プックル : ガルゴルガール。
ミハルン : かなり揺れているのは岸からも見えたって言ってます。
ベリンカ : あっ…ヨットだしぃ揺れるの当然よ。
ミハルン : 私のお友達のマリンスライム君が覗いた所、揺れる原因は他にも…。
ラスネル : もういい。ふぅ、ミハルンの好奇心には参ったもんだ。

《テルパドール》
女王アイシスが庭園で寛いでいた。
アイシス : ようこそいらっしゃいました。私がこの国の女王アイシスです。あなたがたも伝説の勇者様のお墓を、お参りに来たのですか?
ラスネル : ええ、そこがこの国の観光名所ですよね。
アイシス : いいでしょう。あなたがたには、なにかしら感じるものがあります。案内しましょう。私についてきてください。

《勇者の墓》
ラスネル : ここが勇者が破瓜されて、ひんひん泣いた場所か。女勇者だったという伝説もあるし。
ベリンカ : んもう、違うわよ。
ラスネル : そう言うベリンカこそ、「勇者の馬鹿」でギャグを考えたのに、思い付かなかったって顔してるじゃないか。
ベリンカ : あっ、顔に出てたんだ。恥ずかしぃ。
アイシスは苦笑いをしている。
ラスネル : 俺達夫婦はもっと恥ずかしい事してるんで、気にしないでください。
アイシス : 実を言うとここは、勇者様を祭ってはいますがお墓ではありません。世界を救った後、勇者様がどこにゆかれたのか誰も知らないのです。しかし我が国には代々天空の兜が伝わっていました。もし再び伝説の勇者様が現れれば、きっとこの兜も求めるはず。その日が来るまで兜を守るため、ここを建てたのです。
ベリンカ : ふーん。
アイシス : さあ、あなたもその兜を被ってみてください。
ラスネル : うぐっ、軽いはずなのに頭が重い。これじゃ動けないな。
アイシス : やはり駄目でしたか。あなたがたにはなにかしら感じたのですが、思い違いだったようですね。では戻る事にしましょう。ついて来てください。
庭園に戻った。
アイシス : 私は少しですが人の心を読む事もできます。多分あなたの勇者様を強く求める心が、私を感じさせたのでしょう。
ラスネル : 感じて気持ち良かったですか?
アイシス : …なぜそれ程に勇者様を求めるのか事情を聞かせてくれますか?
ラスネル : いいですよ。

アイシス : まあ! それでは亡き父に代わって母親を魔界から救い出すために!? もしやその父とはパパス王の事ではっ!? この地より海を越えた遥か東の国グランバニア。その国のパパス王が、攫われた王妃を助けるため、幼な子を連れ旅に出たと聞いた事があります。
ラスネル : 幼な子って俺の事?
アイシス : もしそれがあなたなら、東の国グランバニアに行ってみるといいでしょう。

何日も掛けて、グランバニアへ続くというチゾットへの山道を進む。

《チゾットへの山道》
ベリンカ : はぁ、疲れちゃった。
ラスネル : 女の子にはこの道はきついかな。
洞穴に老婆がいた。
老婆 : イッヒッヒッヒ。どうなされた旅の人。道に迷われたかの?
ラスネル : 迷ったかどうかも判らん。
老婆 : それはお困りじゃろ。今日はここに泊まってはどうじゃ?
ベリンカ : 私ぃ、休みたい。
ラスネル : よし、ベリンカが言うなら。
ベリンカ : 良かった、久し振りにベッドで寝られるわぁ。
ラスネル : ベッドで良かった。ここに来るまでに何回かやったけど、やっぱ野外エッチは俺達の趣味じゃないらしい。
老婆 : ではゆっくりと休みなされ。わしは上にいるからな。イッヒッヒッヒ。

シャコ…シャコ…。
ベリンカ : ラスネル、起きて……。あの音はなにかしら……。まるで刃物を研ぐような音ね……。ねえ、なんだか怖いけど行ってみる?
ラスネル : よし…。
ベリンカ : 気をつけてね……。
ラスネル : あれっ、体が動かない! 寝る前にベリンカと愛の交わりをやりまくったからかな?
老婆が現れた。
老婆 : なんじゃ起きていたのかい。ベッドのガスガスいう音が止んだから眠っていると思ったし、よく眠れるように呪文をかけておいたのじゃが、あまり効かなかったようじゃな。ところで、イッヒッヒッヒ。これを見てみい。お主の剣を研いでおいてあげたぞ。
老婆 : さあまだ夜中じゃ。もっと、ベッドで暴れるなり眠りなされ。

翌朝
老婆 : よく眠れたようじゃな。もう朝じゃぞ。気をつけてゆきなされよ。イッヒッヒッヒ。

山の頂上にある街・チゾットへ到着した。ここに来るまでに2ヶ月は費やしたであろうか。
《チゾット》
男 : ここはチゾットだよ。
ベリンカは口を押さえた。
ベリンカ : うぇえ…。
ラスネル : どうした?!
ベリンカ : ううん、なんでもないわ。ちょっとだけ気分が……。心配しないで……。だ い じょ う ぶ……。
バタッ
ベリンカは倒れた。
男 : これはいかん! とにかくベッドに運ぼう! さあ、あんたはそっちを持って!
ラスネル : こらっ、あんたがそっちを持つと、ベリンカの脚が見えちゃうだろっ。

《宿屋》
神父 : ふーむ……。特に熱はないようだし、ただの疲れかも知れんな。とにかく今日は安静にしていなさい。では私はこれで。
男 : 大した事がなくてよかったですな!
ラスネル : 俺のお嫁さんだ。キュートだろ?
男 : へえ、あなたの奥さんですか。いやーべっぴんさんだ! 脚も細くてそそられましたし。あまり無理をせず大事にしてやって下さいよ。
ラスネルはベリンカに優しく語り掛ける。
ラスネル : 気分はどうだい?
ベリンカ : もう大丈夫よ。でもなんだか眠たくなってきちゃった……。私ぃ、少し眠るわ。お休み、ラスネル……。

翌日
ベリンカ : おはようラスネル。私もう元気が出たわよ。だってもうすぐ、ラスネルのふるさとが見られるんだもんね。さあ行きましょう!
ラスネル : おっと、宿屋に忘れ物だ。
男 : おう、あんたかい。このノートを忘れたんだろ? いやー、古びたノートだがエッチな知識やテクニックが詰まってるね。あんたが書いたのかい?
ラスネル : いや、子供の頃、誰かに貰ったんだ。そろそろ書き写さないと、なにが書いてあるか判らなくなるな。
男 : 話は変わるけど、偶然もあるもんだな。さっき、気分が悪くなって宿屋に運ばれた旅の女性がいたんだ。顔にバタフライマスクを着けていてアッチ方面の人だが、身体はモデルクラスだね。連れの男はピエロだったけど、あの女性の夫かな?
ラスネル : ふーん、じゃあ俺はもう行くよ。

また何ヶ月か掛けて、チゾットへの山道を抜けた。

《グランバニア城》
ラスネル : でかい城だ…俺は本当にここの王子なのだろうか…。
ベリンカ : 城門は閉まっているようね。
ラスネル : どうやって入るか、誰かに訊いてみよう。

《民家》
シスター : あら? お客様がいらしたみたいね。それでは私はこれで……。
シスターは去った。
サンチョ : はて? どちら様でしたかな?
ラスネル : 名前はラスネルだけど。
サンチョ : ん? まさか……! もしかしたら……! もしや、まさかっ!ラスネル坊ちゃん!?
ラスネル : 人違いだ。
サンチョ : そのあまのじゃくな口振り、やっぱりラスネル坊ちゃんだ! 間違いない!
ラスネル : はっはっは、サンチョか。
サンチョ : 生きて……生きていなさったんですね……。どれ、もっとよくお顔を見せてください。本当に……立派になられて……。
ラスネル : アソコはもっと立派だぞ。もうお前に見せるのは恥ずかしいけど。
サンチョ : パパス様の息子ならば、さぞかし立派なモノを…。ところでそちらの美しい女性は?
ベリンカ : 私よサンチョさん。判らないかしら? ベリンカよっ。
サンチョ : ひゃー! あのベリンカちゃんかっ! なんとまあ綺麗になって。
ベリンカ : 私達、結婚したのよ。ねっラスネル。
ラスネル : 結婚だけじゃなくて、色々な体位でエッチしたぜ。
サンチョ : そ、そうだったんですか。もう会えないかと思っていた坊ちゃんが、色々な体位でエッチを受け入れてくれた可愛い奥さんまでお連れになって。しかも、その相手はお医者さんゴッコをしようとした坊ちゃんを、しょっちゅう殴る蹴るしていたベリンカちゃんだなんて…。なにやらもう胸がいっぱいで……。うう…………。
サンチョは泣き出した。
ベリンカ : サンチョさん……。
ラスネル : おいおい、鼻血出しながら泣くんじゃない。俺とベリンカの行為を想像でもしたのか?
サンチョ : とにかく坊ちゃんが帰ってきた事をオジロン王に知らせなきゃ。既にご存知でしょうが、旦那様は…パパス様はこの国の王だったのです。
ラスネル : すると今は?
サンチョ : 今はパパス様の弟オジロン様が国王になられています。さあ坊ちゃん。私について来てください。

《城内》
兵士 : これはサンチョ殿。どうなされました?
サンチョ : 重大な報告があり、至急王に会いたい。どうか通されたい!
兵士 : はっ!

《王の間》
オジロン : おお、サンチョか。なにやら嬉しそうな顔に、鼻血を止めるティッシュ。エッチな事でもあったのかな?
サンチョ : 実は王様……。

オジロン : なんと! パパスの……兄上の息子のラスネルが生きていたと申すかっ!
ラスネル : まあね。
オジロン : おお! その目はまさしく兄上の奥方マーサ殿に生き写し! あの時の赤ん坊が、これ程立派に成長して帰ってくるとは……。申し遅れたが、わしはそなたの父パパスの弟のオジロンじゃ。
ラスネル : 俺の叔父さんというわけですね。
オジロン : して、隣にいるそのキュートな女性は……?
ベリンカ : はい、王様。私はラスネルの妻、シ、ベリンカ……と……
ベリンカは倒れそうになり、ラスネルは抱えた。
オジロン : こ、これはいったいどうした事だっ!?
サンチョ : シ、ベリンカちゃん!

ベリンカはマーサのベッドに運ばれた。
サンチョ : よかった。ベリンカちゃん、気がついたようですよ。
ラスネル : ベリンカは大丈夫なのか?
シスター : まったく、そんな身体で旅をしてくるなんて……。聞けば山の上の村でも1度倒れたというし……。もしもの事があったら、どうなさるおつもりかしら?
サンチョ : そ、そんなにひどいのですか? シスター?
シスター : ひどいもなにも……。おめでたです。
ラスネル : いっ? サンチョ : へっ?
シスター : おめでとうございます。ラスネル様はもうすぐ、お父様になられますよ。
ラスネル : やだやだ、まだパパになんかなりたくない。(確かに避妊なんてした記憶はないけど…。)
シスター : まあっ。でも無理ありませんわ。突然ですものね。ベリンカさんに赤ちゃんができたのです。
サンチョ : こいつはめでたい! 坊ちゃんとベリンカちゃんの子供だから、きっと珠のように可愛い赤ちゃんが生まれますよ!
シスター : では、私はこれで。どうかお大事に……。
ベリンカが目を覚ました。
ベリンカ : ラスネル、ごめんね。今まで隠していて……。そうかなぁって思ったけど、そんな事言ったらラスネルは私のために旅をやめちゃうような気がして。
ラスネル : エッチはやめちゃうだろうな。
ベリンカ : でももう一緒に旅をしたいなんて我侭を言わないわ。身体に気をつけて、きっと丈夫な赤ちゃんを生むわ。好きよ、ラスネル。
チュッ

《王の間》
オジロン : おお! 既ににシスターから聞いたぞよ。めでたい限りじゃ。そこでラスネルに話したい事があるのだ。さあさあこっちへ。
ラスネルはオジロンに近づいた。
オジロン : 実はなラスネル。わしはそなたに王位を譲ろうと思うのだ。
大臣 : オジロン王! 私になんの相談もなく、突然なにを言われる!
オジロン : まあまあ、いいではないか大臣。わしは元々人がいいだけで、王の器じゃないのじゃ。兄上の息子のラスネルが帰ってきた以上、ラスネルに王位を継がせるのが道理というものじゃろう。
大臣 : そこまで言われるのなら……。しかし代々王になられるお方は、試練の洞窟にゆくのが我が国の仕きたり。
オジロン : だが大臣。昔と違い、今ではあの洞窟にも怪物達が。
大臣 : どんな事があろうとも、仕きたりは仕きたり。守っていただかぬと!
オジロン : ふむ……。それもそうか……。ラスネルよ。話は聞いたであろう。
ラスネル : ぐーぐー…はっ、ええ、聞いてましたよ。
オジロン : わしはそなたに王位を譲りたいのじゃ。頼むっ! 試練の洞窟に行って王家の証を取ってきて欲しい! そしてその時こそ、そなたに王位を譲ろうぞっ! 試練の洞窟はこの城の東、森の中じゃ! とはいえ当面は長旅で疲れておろう。出発は来月にし、ゆっくりと休むがいい!
ラスネル : 分かりました。
オジロン : ラスネルがパパスの息子だという事は、今暫く伏せておいてくれ。

ある朝
ラスネルとベリンカはベッドにいる。
ベリンカ : おはようラスネル。昨日は二人共も凄く寝ちゃったね。
ラスネル : 赤ちゃんがいるんだから、手を繋いで寝るしかないだろ。それより体は平気か?
ベリンカ : うん私は大丈夫よ。だいぶ元気になったみたい。でもラスネルがこの国の王子様だったなんて、ビックリしちゃったわ。もしラスネルが王様になったら、私達の子供も王子様か王女様ね。
ラスネル : そうだな。
ベリンカ : なあんて、そんな事はどうでもいいの。私は今のままで充分に幸せよ。
チュッ
ラスネル : ベリンカも落ち着いたようだし、試練の洞窟に行って来るよ。
ベリンカ : 気をつけてね。ちょっとだけ嫌な予感がするの。

《試練の洞窟》
魔物が現れた。
ラスネル : くっ、魔物が強い…あのオジロンの時にこの状態だったらクリアできなかっただろうな。
ビシッ
鞭の女が魔物を倒した。
ラスネル : ん?
鞭の女 : あーら、苦戦しているようね。あなたがよければ、私がご一緒してもよろしくてよ。
ラスネル : (顔はマスクで隠れているがいい女では…? いかん、俺は結婚してからはベリンカ一筋なんだから。それによく見るとかなり腹が出てるし、体型は俺のタイプじゃないな。)
鞭の女 : どうかしら?
ラスネル : あんたの仲間はピエロにケーコジキメラか。よし、一緒に来てくれ。
鞭の女 : ほーっほほほほ、私に任せなさいっ。

王家の証を手に入れた。
ならず者A : おっと待ちな!! 悪いが王家の証を持って行かせるわけにはいかねえな!
ラスネル : なにっ?
ならず者B : ラスネルさんが王になるのを嫌がる者もいるって事よ。
ならず者A : シーッ。余計な事を言うな!
ならず者B : ともかく、そいつを渡してもらうぜ!
カンダタとシールドヒッポが現れた。
シールドヒッポはカンダタを守りながら戦う。
ラスネル : シールド野郎を先に片付けるか。
カンダタはラスネルを後ろから襲う。
鞭の女 : 危ない!
グシャッ!
カンダタの攻撃は鞭の女の腹に直撃した!
鞭の女 : ぎゃああああぁー−ーーー!!!!!
ラスネル : おい大丈夫か!?
ピエロ : うわー! ミロ…彼女はボクが看ますから、早くあいつらを!!
ラスネル : わかった。
カンダタ達を倒した。
鞭の女は痙攣している。
鞭の女 : あぐぐぐく…。
ラスネル : かなり効いたらしいな。よし、グランバニアの病院へ連れていくぜ。

《グランバニア・病院》
鞭の女を病院に運んだ。
ピエロ : 彼女になにかあったらキミのせいだぞ!!
ラスネル : (…んな事、言われてもな。)

《王の間》
オジロン : おおラスネルよ! よくぞやり遂げた! 王家の証、しかと見届けたぞよ! これで晴れてそなたに王位を譲れるというもんじゃ。大臣! そなたも、もはや文句はないであろう?
大臣 : 文句とは心外ですな。私はただ、仕きたりの事を言っただけで文句などは……。
オジロン : そ、そうであったな。とにかくラスネルがこの国の王になるのじゃ。
大臣 : ではこの事を国中に知らせなくてはいけませんな。それに即位式の準備も……。その役目この大臣が引き受けましたぞ。さて、そうと決まったらこうしてはいられないわい。ではこれにてっ!
オジロン : ふーむ……。反対していたわりには大臣も気が早い事だな……。

侍女 : 大変でございます。大変でございます。
オジロン : なっ、何事だっ!?
侍女 : はい! ベリンカ様が……ラスネル様の奥様が赤ちゃんを!
オジロン : なんと! 産まれたと申すかっ!?
侍女 : いいえ。でも、今にも産まれそうで……。
オジロン : なんとめでたい! これはもしかすると新しい王と王子の二人が同時に誕生だわい!
ラスネル : 女だったら王女なのに…。
オジロン : おっとラスネル! のんびりしている場合ではないぞっ。
侍女 : さあラスネル様、こちらでございます!

《ベリンカの部屋》
ベリンカ : ラスネル……戻って来てくれたのね……。私ぃ、頑張って元気なラスネルの赤ちゃんを産むわ……。ハアハア……。
侍女 : お二人の子供ですから、きっと可愛い赤ちゃんですわよ。
シスター : お静かに。今まさに新しい生命が生まれようとしています。
産婆 : なーに大丈夫さ。これでも私は今まで3人も産んでるんだよ。さあさあ、ここは私達に任せて、下の部屋で待っておいでよ。

ラスネルは広間をうろうろしていた。
ラスネル : 父さんもこんな気分だったのだろうか…。
侍女が階段を降りてきた。
侍女 : ラスネル様、ラスネル様! お産まれになりました!
近くにはサンチョとオジロンがいる。
サンチョ : 坊っちゃん! おめでとうございます!
オジロン : さあ、わしに構わず行ってあげるがよい!

《ベリンカの部屋》
ベリンカ : ラスネル……。私ぃ、頑張ったよ。よくやったって誉めてくれるかなぁ?
ラスネル : ああ、ベリンカのあの狭い所から産まれたなんて、凄く頑張ったんだろう。
ベリンカ : ありがとう。ラスネル……。確かに初めてラスネルと結ばれた時よりも凄く痛かった。
ラスネル : だろうな。
ベリンカ : はい、私達の赤ちゃんよ。
ラスネル : 二人も産まれたんだな…。男の子に女の子か。
ベリンカ : ねえ……。赤ちゃんの名前、どうする? 私はラスネルに名前をつけて欲しいな。
ラスネル : 分かったぜ。(キラーパンサーの時にベリンカのセンスゼロが判明してるし、俺が付けるしかない。)
ベリンカ : 男の子の方はどんな名前がいいかしら?
ラスネル : トンヌラというのはどうだい?
ベリンカ : ええっ!? 男の子 : いぎゃあ!
ラスネル : 勇ましくてて賢そうという意見もあるみたいだぜ。世界中の人口を100とすれば答えるのは0だけど。
男の子 : いやー。
ラスネル : ん? 今、俺の息子が喋らなかったか?
ベリンカ : 素質ある私の子供だもの、頭がいいに決まってるわ。だから、もっと相応しい名前がいいなぁ。
ラスネル : ラシームってのはどうだい? ラスネルとベリンカの頭文字を取ったんだ。
ベリンカ : うん。女の子の方はどんな名前がいいかなぁ?
ラスネル : この子はおとなしいから、カームベルってのはどうだい?(おとなしいというか、変な名前をつけられそうになってないから、わめかないだけなのかも知れないが。)
ベリンカ : うん。ラシームとカームベル。ちょっと変わってるけど素敵な名前ね。男の子はラシームで女の子はカームベル。これに決めていーい?
ラスネル : ああ。
ベリンカ : ラシームとカームベル。この二人が大きくなるまでに平和な時代がやってくるといいね、ラスネル。
ラスネル : 俺が平和にしてみせるさ。
ベリンカ : 疲れたせいか、私ぃ、なんだか眠くなってきちゃったわ。おやすみラスネル。私、とっても幸せよ……。

新しい王とそして王子、王女誕生の知らせは、その夜の内に国中に広がった。

人々はパパス王の息子ラスネルが生きていた事を心から喜び、そしてまたオジロン王の英断に喝采を浴びせた。
グランバニアに新しい国王・ラスネル王の誕生である。


ベリンカ : おはようラスネル。昨夜はとってもよく眠れたわ。今日はラスネルの即位式なんでしょう? 頑張ってきてねっ。

《王の間》
兵士 : さあラスネル様! こちらでございます!
民衆が集まっていた。
オジロン : おお来たか!ラスネル。
オジロンは民衆に向けて言う。
オジロン : 皆の者! よく聞くようにっ! 既に知っている者もおろうが、今、余の隣にいるのが先代パパス王の息子ラスネルじゃ。
民衆 : オー!
オジロン : 余はこれよりこのラスネルに王位を譲ろうと思う! ラスネルよ、跪くがよい。
ラスネルは跪いた。
オジロン : グランバニアの子にして偉大なる王パパスの息子ラスネルよ! 余は神の名にかけて、本日この時よりそなたに王位を譲るものである。さあラスネル。その王座に座るがよい。
ラスネルは王座に着いた。
オジロン : 皆の者、待たせたな! たった今、グランバニアの新しい国王が誕生した! ラスネル王じゃー!
民衆 : ラスネル王! 万歳!
民衆 : ラスネル様、ご即位万歳!
民衆 : グランバニアに栄光を! ラスネル王、万歳!
オジロン : さあラスネル王! 次は国中の民にも新しい国王のお姿を!

ラスネルは城を歩く。
兵士 : 新しい国王ラスネル様に敬礼っ!
民衆 : 新しい王様、ばんざーい!
民衆 : ラスネル王、ばんざーい!
サンチョ : 坊っちゃん! いえ……ラスネル王! このサンチョ、今日程嬉しい日は……。うっうっ……。
男 : ラスネル王、万歳! 国中の民が下の階で国王様のお出ましを待っております!

ラスネルは民衆から激励の言葉をかけられる。
病院を通りかかった。

《病院》
ピエロ : おおっ、キミはこの国の王子いや、王だったのか…。
ラスネル : 鞭の女は無事かい?
ベッドには窓際を向いた紫色の髪の女がいた。
ラスネル : (鞭の女だな…。)
ラスネルが来た事を知りマスクを着けた紫髪の女は、ラスネルの方を振り向くと絶望の涙を流していた。
ピエロ : 彼女は死産したんだ…。
ラスネル : そうだったのか…。(ピエロとの子か…。俺に手助けすると言ったのも、戦闘中に俺を庇ったのもあの女だが…悪い事をしたな…。)
紫髪の女 : ラスネル王、ご即位おめでとう…脇役君が王様になれるなんて、私に関わったお蔭ね。
ラスネル : …落ち着くまでこの国で休んでてくれ。なーに、入院費とかは国の帳簿から引いておく。
紫髪の女 : そうさせていただきましてよ。まずはメロンをくださる?
ラスネル : ああ、用意させるよ。

その日は国中を挙げて、夜晩くまで祝賀の宴が催された。
一方その頃、エローラは自分の乳房から溢れ出る母乳を流して捨てていた。
エローラ : ううぅ…ううぅ…。
流れていく母乳には彼女の涙も混ざっていた。

そんな事も知らない人々は、あるいは歌い、あるいは踊り、この日の喜びを分かち合った。
しかし!
侍女 : 王、王様! 申しわけありません! 王妃様が、ベリンカ様が怪物共に攫われて!
ラスネル : なんだって?!
侍女 : 私はこの2人の赤ちゃんを抱いて身を隠すのが精一杯で、王妃様までは……。も、申しわけありません! ううう……。
サンチョ : 坊ちゃん! いえ、王! 城の中が妙に静まり返っておかしな気がしたので来てみたのですが、まさか、王妃様が……。ベリンカ様が……。
ラスネル : ああ、大変な事になった。
サンチョ : な、なんという事だ! これではまるで20年前のあの日と……。いえ、同じにさせてなるものですかっ! さあ、坊ちゃん! 城の者達を叩き起こすのです! そしてなんとしても王妃様を、ベリンカ様を!
ラスネル : よし、行くぞ!
翌日
オジロン : すると城の者達が眠りこけた頃、怪物共がやって来たと申すのだな?
侍女 : はい。でもベリンカ様はいち早く邪悪な気配を感じて、私に赤ちゃんを連れて隠れるようにと……。
兵士 : それにしても、その騒ぎに誰も気づかぬ程に眠りこけていたとは妙ですね。何者かが祝賀の酒の中に眠り薬でも入れたのかも……。
オジロン : そういえば大臣の姿が見えんな。大臣はどうした? 誰か大臣の姿を見た者はおらぬか?
兵士達 : …………。
ラスネル : (確か宴の準備は大臣がしたはず…やっぱり食わせ者だったようだな。)
オジロン : ふむ……。いつもならここで大臣の助言を聞くところだが、いないものは仕方がないな。
ラスネル : ベリンカ…。
オジロン : ラスネル王……。心中お察し申すぞ。とにかく、一刻も早く王妃様を捜し出すのじゃっ! ではゆけっ!

北のほこらを抜け、塔を目指した。
《デモンズタワー》
塔の上階に大臣がいた。
大臣 : わ、私が間違っていた……。や、やはり怪物などに力を借りるのではなかったわい……。このままではグランバニアの国が……。許してくれい、ラスネル王……! ぐふっ!
ラスネル : ゴルァー、勝手に死ぬなー。

上階を目指す途中に魔物が現れる。
オーク : ほほう。ここまで来るとは大した奴だな。しかしこれ以上は、このオレ様を倒さぬと進めぬぞ。残念だったなっ!
オークが現れた。
…。
倒した。
オーク : そんな……。このオレ様がやられるとは。ぐふっ!

キメラ : ケケケ! うまそうな奴がやって来たわい! さっきの女もうまそうだったが、あの女はジャミ様に捕らわれてしまったからな。代わりにお前を食ってやろう! ケケケ!
キメーラが現れた。
…。
倒した。
キメラ : おめえ……。強いじゃねえか……。けどジャミ様にはかなわねえぜ。ケケケ……。ぐふっ!

ジャミの横に気絶したベリンカがいた。服を脱がされ、ショーツ一枚となっていた。
ラスネル : ベリンカを返せ!
ラスネルは飛びかかる。
ジャミ : そう死に急ぐ事もあるまい……。愛する妻に別れの言葉でもかけてあげる事だな。
ベリンカ : ラスネル、やっぱり来てくれたのね! でも……。来ない方がよかったかも。大臣を利用して私を攫ったのはラスネルを誘き出すため。そしてあなたを亡き者にした後、自分が大臣に成り済まして……。 あ!
ジャミがベリンカを弾き飛ばし遮った。
ジャミ : さて、無駄話はもういいだろう。国王たる者、身内の事よりまず国の事を考えねばならぬはず! なのにお前は、ここに来てしまった。それだけで充分に死に値するぞ。わっはっはっはっ! さあ! 2人仲良く死ぬがよい!
ジャミとの戦闘が始まった。
ジャミにはほとんど攻撃が効かない!
ジャミ : わっはっはっはっはっ! オレは不死身だ! 誰もこのオレ様を傷付ける事はできない! ラスネル! 死ねっ!
ベリンカ : やめてーっ! やめなさいジャミ!
ベリンカからまばゆい光が溢れ出す。
ジャミ : こ、この光は……。
ベリンカ : さあラスネル! 今よ!
ラスネルは剣を振るった。
バシュッ!
ジャミを倒した。
ジャミ : こ、こんなはずは……。さ、さっきの光は……。まさかその女! 伝説の勇者の血を……。勇者の子孫がまだ生きていたとは……。
ベリンカ : え? 私が勇者の子孫?
ジャミ : やがてお前の血筋から、伝説の勇者が蘇るだろう。しかし、それだけはなんとしても止めねばならぬ。これでも食らえ!
ラスネルとベリンカは石になった。
ジャミ : わっはっはっはっ! その身体で世界の終わりを見るがいい……。
ジャミは絶命した。

盗賊の兄弟が塔に現れた。
兄 : なんでい! 宝があるって聞いたのにそんな物ねえぞ!
弟 : うわー、立派な石像だなあ。まるで生きてるみたいだよ。ねえ兄さん。この石像を持ってゆけば高く売れないかなあ。
兄 : ホントだ! こいつは色っぺえ石像だな! 胸の形もいいしパンツまでリアルに再現してやがる。
兄の方は石像となったベリンカの胸などをぺたぺた触る。
兄 : 脚開け〜! くぅ、やっぱり無理か。
弟 : 兄さん、人形フェチはやめてくれ。
兄 : よし! こっちはオレが貰った! おい! 行くぜっ!
弟 : 待ってよ、兄さん!
盗賊の兄弟は石となった二人を運び出した。

《グランバニア》
オジロン : ええいっ! ラスネル王の行方は、まだ判らんのかっ!?
兵士 : はい。国中の者に捜させておりますが、いまだ……。
オジロン : それにしても大臣までいなくなるとはっ! 全くもって、なにがどうなっているのか……。
兵士 : オ、オジロン様! 遥か北のほこらで王のお姿を見た者が!
オジロン : なんと! ラスネル王を見た者がいると申すかっ!?
兵士 : はっ!
オジロン : よし! 皆の者! 北の地じゃ! 北の地を隈なく調べるのじゃ! どんな些細な事でも見逃すでないぞ! さあ行けいっ!
兵士は北へ向かった。
オジロン : ラスネル王も王妃も、ご無事でおられると良いが……。
二人の赤ちゃん : ふぎゃー! ふぎゃー!
サンチョ : おお! ラシーム様、カームベル様、どうなさいました!?
侍女 : まあまあ! こんなにお泣きになるなんて初めてですわ。もしやラスネル王と王妃様の身になにか……・
オジロン : これ! 滅多な事を言うでないぞ。
サンチョ : そうですとも! お二人はきっとご無事でございます! ですからラシーム様もカームベル様もどうかご安心を……。父上と母上はきっと帰ってきます。帰ってきますとも! おお、よしよしよし……。
女が現れた。
女 : 二人はおながが空いていましてよ。
その女は悲しい顔をしながらも美しく、気品に溢れていた。

とある町では、ならず物の兄弟により石像のオークション[競売]が行われている。
兄 : さあさあ、いよいよ今日の一番の売り物だよ! おい!
弟 : あいよ兄さん。
弟はラスネルの石像を用意した。
兄 : どうだい! 見事な石像だろう! これ程の物を滅多によそじゃ手に入らないぜ! さあ1000ゴールドからだ! 1000ゴールド、1000ゴールド!
男 : 1200!
兄 : おっときたぜ! 1200、1200! 他にないかっ?
爺 : 1500じゃ!
兄 : よ! 爺さん、お目が高い! さあ1500だよ! 1500、1500、1500。
女 : 1600!
兄 : おっと出ました1600! もうないかっ? 1600、1600、1600。早くしないと買われちまうよ! 滅多に手に入らない見事な石像だよ!
男 : 2000!
兄 : 2000! よーし売ったあっ! お客さん、いい買い物をしたね。確かに2000ゴールド受け取ったぜ。さあ 持っていってくんな!
男 : おおっ、やったぞ。
兄 : みんな、ありがとうよ! 今日はもうお仕舞いだ。気をつけて帰ってくんなよ!
弟 : あれれ? 兄さんもう一つの石像は売らなくてよかったの?
兄 : ああ、こっちはキュートだし、胸の形とパンツの穿き具合が気に入っちまって、もう少し持っておきたいんだ。それにちょっとした当てがあってな。さあて、行くとするか。
弟 : 待ってよ兄さん!

《とある島の屋敷》
使用人に石像を運ばせ、屋敷の主人が戻る。
ケーコド : あっ、旦那様お帰りなさいませ! 奥様奥様、旦那様が戻られました!
婦人 : あなた、お帰りなさい。ほら、ヒナッタちゃん。パパが帰ってきましたよお。
婦人はヒナッタという名の女の子を抱いていた。
ヒナッタ : バブバブ……。
婦人 : ところであなた、その石像は?
主人 : どうだ、なかなか見事な石像だろう。ヒナッタも生まれた事だし、我が家の守り神として庭に飾ろうと思ってな。
婦人 : まあ、あなたったらヒナッタの事ばっかり。私へのお土産はございませんの?
主人 : いや それはその……。わっはっはっはっ。参ったなどうも……。
ケーコド : さあ旦那様。お疲れでしょう。中でなにか冷たい物でも……。さあ奥様も。
ラスネルの石像は、屋敷の前に置かれた。

そして1年後。
婦人 : あなた、あなたったら早く出てきてくださいな。
主人 : そんな大声を上げて、一体なに事なんだ?
婦人 : ほら、あなた見て! ヒナッタが、ヒナッタが……。
主人 : おお! ヒナッタもついに歩けるようになったか! 偉いぞ! ヒナッタ。どれ、もう一度父さんに見せておくれ。
ヒナッタはヨチヨチ歩きする。
婦人 : ヒナッタは本当にアンヨがお上手ねえ。
ケーコド : (あんまり子供を誉めると、性格がおかしくなっちゃうんだけどねえ…。)
主人 : ……………。
婦人 : ? どうしたのあなた? 急に黙ってしまって……。
主人 : いや、最近なにかと良くない噂を耳にしてな。せめてこのヒナッタが大きくなるまでは……。
婦人 : 大丈夫ですよあなた。だって我が家にはあなたが1年前買ってきてくれた、この守り神の石像があるのですものね。
主人 : そ。そうだったな。わっはっはっはっ。

その頃
ベリンカの噂を聞き、グランバニアの城を旅立つ女と男がいた。

数年後
《とある島の屋敷》
婦人 : まあまあ、ヒナッタったら。そんなにはしゃぐと転びますよっ。
ヒナッタ : わーい、わーい。
人間に近い姿をした魔物が出現した。
婦人 : …………!! メ、ヒナッタ。こ こっちへいらっしゃい……。
ヒナッタ : おじちゃん達、誰?
魔物はヒナッタを捕まえた。
婦人 : ヒナッタ!
魔物A : ケケケ! この子供か?
魔物B : さあ、判らねえな。しかし間違えたって、奴隷として使えばいいだろう。ケケケ!
魔物 : そうさな。子供なら大人と違っていう事を聞かせやすいし。
婦人 : や、やめて……。その子は……。
ヒナッタは魔物に連れ去られた。
主人 : ど、どうしたんだっ!? 一体なにがあったんだっ!?
婦人 : あ、あなた! ヒナッタが、ヒナッタが怪物達に……!
主人 : な、なんとっ!

一ヶ月後
主人 : あれからもうひと月。私達の可愛いヒナッタは今頃どこに……。
使用人のクラウドが来た。
クラウド : 旦那様。
主人 : やっ、クラウド。戻ったな! で、どうなんだ? ヒナッタの事が少しでも?
クラウド : いえ、旦那様。それがさっぱりでさ。
主人 : そ、そうか……。ご苦労だったな……。ええいっ! なにが守り神だっ! こいつめ! こうしてやる、こうしてやる!
屋敷の主人は石像に殴る蹴るをする。
クラウド : だ、旦那様! どうか落ち着いて!
主人 : はあはあ……。
クラウド : ほら、旦那様。言わんこっちゃねえ。そんなに息を切らせて。さあ家の中で少し横になった方が。
主人 : ああ、うむ……。


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